「石」を使って築かれた、勝山市と福井市の2つの中世都市
勝山市の国史跡白山平泉寺旧境内と、福井市の一乗谷朝倉氏遺跡。
直線距離で20数キロ離れた2つの遺跡は、どちらも石を使って築かれた中世の都市の跡です。
この共通点に注目したのが、日本遺産「400年の歴史の扉を開ける旅~石から読み解く中世・近世のまちづくり越前・福井~」(通称:「福井・勝山 石がたり」)です。
この記事では、2か所の見どころと、この日本遺産を体験できるツアーをご紹介します。
日本遺産「福井・勝山 石がたり」とは

福井市と勝山市にまたがる27件の構成文化財
日本遺産は、地域に点在する文化財を1つの物語としてまとめて認定する文化庁の制度です。
「福井・勝山 石がたり」は2019年(令和元年)の認定で、福井市と勝山市にまたがる27件の文化財で構成されます。
中世から近世のまちづくりを、「石」と、石を扱う「技術」から読み解く物語です。
石がかたる3つのストーリー
この日本遺産のストーリー構成は3つ。
(1)中世の2大都市を扱う「石づくりの戦国城下町と中世宗教都市」
(2)その技術が福井城や勝山城下町に受け継がれる「近世城下町のまちづくりと石」
(3)庭園や石仏に美意識と祈りを見る「石に現れた日本人の美と信仰」
です。
本記事でたどるのは(1)の「石づくりの戦国城下町と中世宗教都市」のうち、白山信仰の拠点として山あいに開かれた「白山平泉寺」と戦国大名の朝倉氏が谷あいに築いた「一乗谷」です。
先に石でまちをつくり上げた平泉寺の技術が、のちに一乗谷へ受け継がれました。
国史跡白山平泉寺旧境内|石でつくられた、国内最大級の中世宗教都市

48社36堂6,000坊院、僧兵8,000人の巨大都市だった
白山平泉寺が開かれたのは養老元年(717年)。越前(福井県側)における白山信仰の拠点として発展しました。
中世の最盛期には、神をまつる社が48、仏をまつる堂が36、そこに僧侶が寝起きする坊院が6,000棟建ち並び、8,000人の僧兵を抱えていたとされます。東西1.2キロ、南北1キロにおよぶ範囲に広がった、日本屈指の宗教都市でした。
しかし天正2年(1574年)、一向一揆に攻められ全山を焼失します。
なお、明治の神仏分離令で寺号は廃止され、現在は「平泉寺白山神社」となり、その苔むした美しい景観から福井の「苔宮」と呼ばれています。
1989年の発掘が明かした、石のまちづくり
焼失した都市の姿が再び見えはじめたのは、1989年に発掘調査が始まってからです。
土の下から大規模な石垣や石畳道が次々と姿を現し、全国に先駆けて石で都市全体を造り上げた技術と経済力が明らかになりました。
石畳と並行して排水溝が設けられ、坊院は等間隔に配置されているなど、平泉寺は水の流れまで計算に入れて設計された宗教都市だったことが分かりました。
国史跡に指定された旧境内は約200ヘクタール、東京ドーム40個分以上の広さがあります。
それでいて、これまでに発掘が及んだのは全体のわずか1%ほど。平泉寺は今も、大半が土の下に眠ったままとなっています。
境内の南に広がる「南谷発掘地」へ


苔の境内を歩いたら、そのまま南の方面へ足をのばしてみてください。
この先にある「南谷発掘地」では、前述した平泉寺の都市づくりを体感できます。
境内の南に広がる南谷は、かつて3,600の坊院が建ち並んだと伝わる一帯です。
発掘調査によって石畳道や排水路、坊院の出入口、石橋、石垣が姿を現し、現在は復元された門と土塀が一部整備されています。
また、この南谷発掘地にある計画的に整備された石畳道も発掘調査で出土されたもの。
中世の僧侶が歩いていた道を、そのまま自分の足でたどることができます。
※雨の後や朝露のある時間帯は石畳が滑りやすいので、歩きやすい靴でお越しください。
平泉寺白山神社 詳細
場 所:福井県勝山市平泉寺町平泉寺(GoogleMaps)
時 間:境内見学自由
定休日:無休
料 金:無料 ※国指定名勝「旧玄成院庭園」のみ拝観料50円
白山平泉寺歴史探遊館 まほろば 詳細
場 所:福井県勝山市平泉寺町平泉寺66-2-12(GoogleMaps)
時 間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:年末年始
料 金:入館無料
問合先:0779-87-6001
一乗谷朝倉氏遺跡|平泉寺の技術を受け継いだ戦国城下町

直線距離20数キロ、石の技術は勝山から福井へ
平泉寺が持っていた石のまちづくりの技術は、直線距離で20数キロ離れた一乗谷に受け継がれました。
宗教都市・平泉寺で磨かれた技術を、武家である朝倉氏が自らの城下町づくりに導入したのです。
これが福井の石のまちづくりのルーツとされています。
平泉寺を見てから一乗谷を訪れば、石垣や礎石の技術の受け渡しを感じることが出来ます。
巨石の下城戸、礎石の屋敷跡、山石の庭園


一乗谷朝倉氏遺跡は、戦国大名朝倉氏が5代103年にわたる越前支配の拠点として築いた城下町の跡です。
278ヘクタールが国の特別史跡に指定され、1967年から半世紀以上にわたって発掘調査が続けられています。
城下町の入口にあたる下城戸跡には、敵の侵入を防ぐために積み上げられた高さ5メートル近くの巨石が残ります。
朝倉義景の館跡や家臣の屋敷跡には石垣による区割りと礎石が良好な状態で残り、各部屋の間取りまで判明しています。
笏谷石(しゃくだにいし)で作られた井戸枠や、寝床を温める「バンドコ」といった生活用品も出土しました。
さらに、山石を立体的に組み合わせた庭園が数多く残り、遺跡全体が国の特別史跡になっていますが、そのうち4つの日本庭園は「一乗谷朝倉氏庭園」として国の特別名勝に指定されています。
福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館


写真提供元:福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館
2022年10月に開館した福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館は、遺跡の玄関口にあたる施設です。1400件を超える公募の中から決まった「あさみゅー」(「朝倉氏」+「ミュージアム」)の愛称で親しまれています。
見どころは、戦国時代の石敷遺構を掘り出したままの姿で公開する「遺構展示室」と、朝倉氏当主の居館を再現した「朝倉館原寸再現」です。他にも国の指定重要文化財を多数含む約800点の出土資料が並びます。
遺跡は広いので、先に博物館で全体像をつかんでおくと、当時のイメージを膨らませることが出来ます。
一乗谷朝倉氏遺跡 復原町並 詳細
場 所:福井県福井市城戸ノ内町(GoogleMaps)
時 間:9:00〜17:00(入場は16:30まで)
定休日:年末年始(12月28日〜1月4日)
料 金:大人(15歳以上)330円、小中学生100円、70歳以上100円
じゃらんでのチケット販売もあります
問合先:0776-41-2330
復原町並と博物館の常設展をあわせた共通観覧券もあります(福井市公式ホームページでご確認ください)。
復原町並以外のエリアは無料で見学できます。
福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館 詳細
場 所:福井県福井市安波賀中島町8-10(GoogleMaps)
時 間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
※特別展会期中は無休。公式サイトの開館カレンダーをご確認ください
料 金:基本展示 一般700円、高校生400円、小中学生200円、70歳以上350円
問合先:0776-41-7700
「石がたり」を体験する|参加できるツアー・イベント
この記事で紹介したのは、27か所ある構成文化財のうちのわずか2か所、3つのストーリーのうちの1つ目となります。福井城址や勝山の七里壁など、「石がたり」にはまだ多くの見どころが残っています。
もっと深く体験したい方には、ガイドと一緒に巡るツアーやイベントへの参加がおすすめです。とくにこの10月は、発掘体験からバスツアー、サイクリングまで、参加できるプログラムが集まっています。
※いずれのプログラムも定員があり、募集状況が変わることがあります。申し込みの前に、必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。


石の文化を体験しよう!発掘体験とバスツアー
学芸員指導の発掘調査の体験と、福井のまちづくりを支えた「笏谷石(しゃくだにいし)」の名所をバスで巡るツアーが下記の日程で開催されます。
- 発掘体験:10月9日(金)9:00〜10:30/福井市東公園/参加料200円
- バスツアー:10月13日(火)9:00〜12:00/集合:福井駅東口/参加料300円
- 対象:小学校5年生から中学生とその保護者 ※お子様だけで参加の場合は保護者による送迎が必要です。
- 申込先:専用Googleフォーム
詳細は、日本遺産「福井・勝山 石がたり」公式サイトのお知らせページから。
笏谷石をめぐるサイクリングモニターツアー
笏谷石をキーアイテムに、福井駅から足羽山・足羽川周辺を自転車で巡るガイド付きツアーです。笏谷石のふるさとにあたるエリアを、自転車で走りながらたどります。
- 日程:10月28日(水)9:00〜12:00
- 集合場所:福井市まちなか案内所「ウェルカムセンター」前
- 参加料:3,300円(税込)
- 申込先:ふくいヒトモノデザイン株式会社 電話 080-1966-3674/メール fhmd001@fukuihmd.co.jp
詳細は、日本遺産「福井・勝山 石がたり」公式サイトのお知らせページから。
まとめ
JAM福井勝山マウンテンリゾートに宿泊して、人が少なく静寂に包まれた早朝の白山平泉寺を散策し、そのまま一乗谷へ。石が静かに語る物語をたどったあとは、宿に戻って法恩寺温泉「ささゆり」で、歩き疲れた体を癒す…そんな旅はいかがでしょうか。
記事中の情報は取材・入稿時の情報をもとにしています。各イベントや各観光スポットの情報については、公式ホームページにてご確認ください。